青山通りにある「伝統工芸 青山スクエア」で、うつわを成形する「ろくろ体験」してきた。青山スクエアは伝統的工芸品産業振興協会が運営するギャラリー&ショップで、全国の伝統工芸品振興を目的としてさまざまな工芸品を展示・販売している。職人さんによる実演や体験もあって、工芸品好きにはなかなかに楽しい空間。
今回ろくろを体験させてくれたのは、益子焼の磯部大我さん。ずいぶん前に粘土遊びみたいな陶芸体験をしたことはあるけど、ろくろは初めての僕に、すごく優しく教えてくれた。
職人さんって気難しいとか口数少ないイメージがあるけれど、僕が今まで会った人は、だいたい優しいし話し好き。磯部さんは穏やかな声で、しっかりと教えてくれた。
エプロンをつけて、電動ろくろの前に座る。手に水をつけ、ろくろの上に乗せられて回る土に触る。つるっとした手触りの中に、小さな粒を感じる、土だ。「手触りがなめらかでなくなってきたら、水を手につけて」と磯部さん。ひっかかって土が崩れるらしい。
最初、真ん中を凹ませて小皿のような形にするまでは磯部さんがあっという間に成形してくれる。たぶん、時間かかるし難しいのかな。
その後、手のひらで包み込むようにしてぐっと持ち上げ、小皿から湯呑みのような形にする。 「ぐーっと力を入れて」と言われても、もともと慎重な質なのでなかなか周りが上がっていかない。
「もっともっと」の声に、ならばと水を手につけ、力を入れて引き上げる。お! なんか形になってきた!
次に器の周りを両手の指で挟んで、周囲を薄くしていく。「ここは慎重に」。確かに、斜めに力を入れたり、変な方向に力が入ると、くにゃっとつぶれてしまいそう。でもここは慎重な質が良かったのか、割とうまくいった(つもりだった)。
木べらみたいな道具を使って底を平らにしたあと、縁をなめしのような布でなめらかにする。ろくろにもいろんな道具を使うのは初めて実感した。全部手でやるわけではないと知っていたけれど、便利な道具がたくさんある。
最後、これは緊張の瞬間。底の部分を糸で切り離す。器の底の部分を糸切りとか糸底と呼ぶのは、ここで糸を使って切ることから来ているのか(たぶん)。
無料体験なので、成形した器は焼けないし持って帰れないけれど、十分に形になったので満足! と思ったけれど、よく見てみれば、器の口から胴はまだまだ厚すぎるし、口当たりも絶対に良くない。これがきれいに焼かれて安く売っていても絶対に買わないレベル…。
ところが不思議なのは、ずっと前に粘土遊び(きちんと色をつけて焼いてくれた)で作った小皿は、不格好で子どもの粘土細工そのままだけど、愛着が湧いてずっと使っているんだよね。割れるまでと思いながら、なかなか割れない。
陶芸にはそんな魅力がある。
一品もの。他にはない。器にいろんな想いが乗っている。縁がある。
縁あって陶芸を見始めたのはいつだったろう。たぶん沖縄に毎年渡るようになって、やちむん(沖縄の焼物)を見に読谷村とかに行ったのがきっかけ? するともうすぐ5年。
それまではまったく陶器に興味はなく、家で使う器にも何のこだわりもなかった。100均のお茶碗とかコップとか、ただ丈夫なだけのものを何も気にせず使っていたよね。
それが変わったのは、陶器の作り手を見たから。この人がこの器を、あの場所で、どうやって作ったのか。それを知ると、子どもの頃からの、ものづくり好きの血が騒いだのか。そして、同じ陶器でも一つひとつ違う。同じものはない。それが、人と同じものは嫌だという自分の性根に火をつけたのか…。
そんなこんなで、近年は旅のついでに陶器の産地に寄ってみたり、陶器市に掘り出し物はないかと覗きに行ったり、はたまた個展なんかにも行ったりする。決して上等なものを買い求めるのではなく、あくまでも自分に合ったものに出会いに。
ところで青山スクエア、陶器を含めた工芸品が、とても良い価格で買えることに驚いた。だいたい都内のセレクトショップだと、窯元とか生産元の価格よりかなり高くなってしまうけれど、僕の感覚だと青山スクエアは現地価格。
すごい穴場かも。また行こう。
展示とか体験とかは随時変わっていくので、事前に確認を。