初めてのオンライン取材・会議 Part 06(実践編)オンライン取材・インタビューの進め方。


オンラインでの取材やインタビューは、対面と比べると進めにくいのは事実です。オンラインならではの「間」をつかみ、より良い話を聞き出すためには、それなりの準備と経験を積む必要があります。相手にオンラインのやりにくさを感じさせないで、心地よく話してもらうためには、何に気をつければよいのでしょうか。

オンラインで変わること、変わらないことを認識する



・対面と同じく事前の準備で成否が決まる


取材やインタビューがうまく行くかどうかの鍵は、事前準備が握っています。しっかりと準備ができていれば、取材はほぼ成功と言ってよいほどです。

企業取材ならば会社の概要を調べて頭に入れ、事例取材ならば商材に関する最低限の知識は理解しておくのは、ライターとして当たり前ですよね。成果物に何を求められているのかを理解し、構成を前もって整理し、必要な情報を取材相手から導き出すのです。

オンラインでも基本的には同じで、どうやって話を進めて、何を聞き出していき、クライアントの評価が高い原稿を書くためには事前の準備が大事です。

話しだしたら止まらない、のを止めるのも経験次第


ただし、オンラインでは不測の事態が起こります。対面取材でも、いきなり取材相手が変更されたり、時間が予定よりも短くなったりすることがありますが、例えばパソコンの調子がおかしくなったり、こちらの声が届かなかったり、相手の声が聞こえなかったり、回線が落ちてしまう可能性もあるのです。

(準備編)で書いたように、画像や音声の通信に関する基本知識を持っておき、善後策を提示できるようにしておくとよいですね。相手の回線が落ちてしまったら、ある意味どうしようもないですが、具体的な対処方法が提示できるように、ITリテラシーを高めておく必要もあるでしょう。


・名刺交換はできない。名前などの確認はチャットを使う


対面では取材やインタビューを始める前に、まず名刺交換を行います。しかしオンラインでは当然、名刺交換はできません。取材相手の名前、漢字表記、肩書きなどは原稿作成のうえで間違えてはいけない情報です。取材をとりまとめる編集者がいて、しっかりと確認してくれていればよいのですが、やはり自分で情報は持っておきたいものです。

ネット上の名刺管理サービスを利用してのオンライン名刺交換も始まってはいますが、まだ普及にはほど遠いところです。QRコードを使って情報をやり取りする方法もありますが、肝心の取材相手にそこまで求めるのは、現時点では無理だと思われます。

ツールの機能を理解し、積極的に活用する


そこで、これは今の緊急措置的な方法ですが、オンライン会議ツールに備えられているチャット機能を使って、相手に名前と肩書きなどの情報を打ち込んでもらいましょう。このチャットを活用することで、取材中に出てきた固有名詞や専門用語なども文字で確認することができます。

ただし、オンライン会議ツールにゲストで参加した場合は、会議が終わってしまうとログを残すことができませんので、その場でコピペして保存しておくことを忘れずに。



・相槌は打たないで、頷くだけで取材を進める


相手の話をテンポよく引き出すために、対面の取材やインタビューでは相槌を打つことが、ライターとしての会話テクニックのひとつです。相槌だけで「もっと続けてください」「いい話もっと聞きたいです」「少し脱線してます」「もう一度お願いします」といった意思を伝えることができます。

しかし、これはオンライン取材やインタビューでは避けた方がよいです。この点がオンラインでの会話で一番難しいところです。使えない理由は2つ、タイムラグと干渉です。

オンラインでは、コンマ数秒遅れて声が届きます。ほんのわずかなのですが、普段の感覚で会話をしようとすると、話し出しがよく被ってしまいます。

対面の空間では、会話が被っても音声は空間に響いています。聞こえていないわけではなく、勘のいい人だと、自身が喋っている間の相手の話が耳に残り、理解することができます。しかしオンラインだと音が干渉して打ち消し合い、双方に届かないのです。

そのため、会話の間に相槌を入れて相手の声に被ってしまうと相手の声が聞こえません。わずかに遅れる反応に、「え?」と感じてしまい、話を止めてしまうこともあるでしょう。これがオンラインでの会話で一番困る点です。

目は口ほどに物を言う、に身振り手振りを加えて


5Gが導入されて通信速度が速くなれば違和感なく会話が成立するかもしれませんが、現時点で考えられる解決策は、頷きの活用です。インタビューを撮影したり録音したりする時に用いる手法ですが、相槌の声を発しないで、頷きや身振り手振りで相手に感情を伝えます。

「なるほど」「その通り」「面白いですね」「ちょっと待ってください」という意思を、頷いたり、表情を変えたり、手を使ったりして相手に伝えるのです。

オンライン会議でも、この手法を使えば会話がスムーズに進むはずです。試してみてください。



・なるべくなら、キーボードは打たないで欲しい


取材の現場で、ノートパソコンで議事録を取る人がいます。すぐに共有してもらえれば会話の要約が確認できるのでありがたいのですが、どうしてもキーボードを叩く音が気になり、会話に集中できないことがあります。ICレコーダーで録音した音声を確認すると、会話が聞こえないくらい大きな音を出してEnterキーを叩く人もいます。はっきり言って、苦手です。止めて欲しいです。

オンライン会議では、議事録を作成する人が外付けのマイクを使ってくれていれば大丈夫なのですが、ノートパソコンのマイクで参加しているにも関わらずキーボードを叩くと、その音がみんなに伝わってしまいます。

相手にどう映って、何が伝わっているかを意識して


オンラインの会議、取材、インタビューでは、必ず外付けのマイクを利用することをお勧めします。どうしてもマイクがなくて、ノートパソコンのマイクを使わなければいけない場合には、キーボードを打たずに手書きのメモで対応して欲しいものです。




「新しい生活様式」が叫ばれていますが、ライターの取材現場においても「新しい取材様式」の時代が来るでしょう。遠隔地の取材はすべてオンラインになり、オンライン名刺が必須となって、資料のやり取りもコミュニケーションツールを活用することになると考えられます。

対面取材はオンラインに比べてはるかに多い情報が得られますし、相手の感情を引き出す必要があるインタビューでは本当に有効なのですが、時代の流れでオンライン取材ができなければ仕事が来ないということになるかもしれません。特にフリーランスは、苦手、避けたいと敬遠するのではなく、何にでも興味を持って、挑戦していかなければならないですね。



【INDEX】

Part 01(準備編)パソコンのカメラはどこにある?
Part 02(準備編)パソコンのマイクはどこにある?
Part 03(準備編)オンライン会議のツールを試してみる。
Part 04(準備編)実は大切なカメラの位置と画角。
Part 05(実践編)オンライン会議の進め方。
Part 06(実践編)オンライン取材・インタビューの進め方。

Part 07(実践編)オンライン取材・インタビューの録音方法。
Part 08(実践編)オンライン取材・インタビューのテクニック。
Part 09(まとめ)これからはオンライン取材・会議が主流に?
Part 10(おまけ)オンライン飲み会