新型コロナウイルス禍を受けた緊急事態宣言が発令され、多くの人が自宅で仕事をする必要にかられ、テレワークが脚光を浴びました。その結果、インターネットを介したコミュニケーションツールやオンライン会議システムの認知が一気に広まりました。ライターの取材やインタビューも、オンライン会議システムを利用することが増え、これからはオンラインが主流になるのではないかと感じるほどです。この数カ月を振り返り、軽く未来予測をしてみます。
・新型コロナウイルス禍、終息後の世界は?
本題に入る前に、ライターとしては終息と収束の使い分けが気になりますね。ちなみに終息とは、禍(わざわい)などが完全に終了すること、収束とは騒ぎが落ち着くこと、くらいの使い分けで大丈夫だと思います。
また、コロナコロナと言葉が乱舞していますが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が引き起こす感染症が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と呼ばれるものです。コロナウイルスによって引き起こされるのは全身性の感染症であり、新型肺炎ではありません。
新型コロナウイルスに関する記事はまだ書いていませんが、ライター業をしていると、こういうことに詳しくなれるのが楽しみのひとつです。
今回の新型コロナウイルス禍が終息するまでは何年もかかるでしょう。感染拡大の第二波が来る可能性は高いと見られていますし、コロナウイルスの亜種が出現するかもしれません。ワクチンや治療方法が確立されても、世界に浸透するまでかなりの時間が必要です。
とは言え、終息するまで何もせず待っているわけにはいきません。まずは移動の制限が課せられているような事態が収束し、取材の仕事が普通に再開される状況になって、すぐに行動できる手はずを整えておくことが大事です。
しかし将来を考える時、終息すれば新型コロナウイルス禍前に戻ると楽観するのは危険で、戻りたいと希望を持つのも良くないと思っています。世界は確実に変わるでしょう。
・新しい生活様式に対応する、新しい取材様式
行政はコロナウイルスとの共存を宣言したように思えます。ロックダウンして完全に撲滅を狙うのではなく、毎年流行するインフルエンザのように、折に触れて禍に悩まされるかもしれないけれど、それでも国家経済の営みを止めることなく、共存して行こうという姿勢です。
すると度々訪れると予測されるウイルスの流行時には、対面取材や長時間の密室取材・インタビューはできなくなるでしょう。それでも取材相手の話を聞き、文章を書き続けていくためには、オンライン取材やインタビューのスキルを上げていかないと取り残されます。
オンラインが選択肢のひとつになるのか、必須のものになるのかは、どこまで事態が収束するのかにかかっていますが、少なくとも一人のライターとしては、新しい取材様式をマスターしておかないと、受けられる仕事は激減するでしょう。
対面して他人と話をするのを、堂々と拒否できる時代になるのですから。
2019年までに培ってきたノウハウを2020年以降の時代に合わせて進化させ、生き残りを探るしかないでしょう。新しい取材様式がどのようなものになるのかはまだ想像がつかない部分がありますが、今まで以上にアンテナを敏感に張って、新たな方式を柔軟に取り入れていく必要があると思います。
・会社のテレワーク、オンライン会議は主流になるのか?
今回の新型コロナウイルス禍を機に企業のテレワーク化が加速し、オンライン会議が主流となるのか、という問いがあります。個人的な答えはNOです。緊急事態宣言が発令され、仕方なしにオンライン会議を導入した企業が多いと見られますが、同時にさまざまな問題が浮上しています。
まずテレワークで使用する各自のパソコンのスペックが弱いということが挙げられます。会社支給であっても、個人所有のものであっても、会社が主体となるコミュニケーションツールを存分に動かすことができず、仕事に支障をきたしているという話を聞きます。
全員に満足のいくパソコンを支給するためにはかなりの投資が必須で、個々の習熟時間も必要でしょう。企業収益の悪化が見込まれる今、すぐに乗り出せる企業はわずかでしょう。
また、今は緊急事態なので目をつぶっている状態だと思いますが、パソコンを持ち出すだけでも企業のセキュリティ上では大きな問題があります。一般回線を使って仕事をするならなおさら危険度は増します。今後最も早急に解決すべき課題かもしれません。
テレワーク先となる自宅やカフェの回線が遅くて細いという問題もあります。みんなが光回線を引いてWi-Fi環境を整えているわけではありません。その金銭的な負担を個人が持たなくてはいけないのか、という疑問も生じてきます。5Gが普及し、容量も速度も数年後には飛躍的に向上すると予想されていますが、個人の家ではまだまだ先の話です。
しかし、よく言われるワークライフバランスや業務の効率性を考えれば、テレワークは非常に有効な働き方です。2020年の世界的な危機において、ただ頭を低くして弾が当たらないように耐えているのではなく、積極的に問題点を洗い出して新しい戦略を考え、来たる時に好スタートが切れるような企業が、アフターコロナの時代に輝くことができる企業になるでしょう。
・新型コロナウイルス禍を乗り越え、新しい世界へ
ライターとしては、企業が早く立ち直り、宣伝広告に安心して資金を回せる状況になって欲しいと願っています。個人的には企業取材を軸にしているので、4月以降ほとんどの案件がストップしたままの状態が続いています。6月後半から7月には再び案件が動き出すと見込んでいますが、まだ予断を許さない状況が続いています。
その先、新しい取材様式で可能となる仕事はどのようなものでしょうか。まっ先に思い付くのは遠隔地取材が容易になるということです。移動時間とコストの節約という意味合いもあり、ますます遠隔地とのオンラインでのやり取りが増えるでしょう。
本来ならば現地を訪れて、取材企業が置かれている地域の雰囲気を感じながら話を聞きたいところです。しかし度々この連載でも触れているように、オンラインで得ることができる情報は、対面での取材に比べて限定的となります。
それでも成果物に求められる情報を欠かすことなく聞き取り、魅力的な原稿にするために話題を深堀りしていかないといけません。そのためには、オンライン特有のやり辛さを理解して、取材相手にストレスを感じさせないように進めていく必要があります。
気軽にオンラインでつなげるようになれば、取材を数度に分けることも考えられます。移動のコストを考慮しなくてもいいわけですから、せっかく行くのだから15分では日程が組めない、ということがなくなります。1日15分ならば忙しい人でもスケジュールを空けることは可能ではないでしょうか。このような細切れの取材ができると、忙しいからと断られていた人に話が聞ける可能性が高まるかもしれません。
そしてオンライン会議ツールだけではなく、コミュニケーションツールも活用することで、原稿作成の流れも変化していくでしょう。現在は社外の人間には使いにくい面があるChatworkやSlack、Microsoft Teamsなどを活用した原稿作成も進むかもしれません。すると、ただWordでテキストを提出するだけではなく、その先の編集作業も任せられる可能性もあります。
このように、ライターとしての能力と編集者としての経験が求められるようになると、負担は増します。しかし個人で活躍できる範囲が広がる可能性もあります。新しく求められるタスクを面倒がらずに受け入れ、スキルを高めて行けるチャンスと捉えたいですね。変化に抗うことなく、柔軟に対応していきたいところです。
このブログでは初めての連載、本編終了です。
書いていくうちにも刻々と状況は変化し、Zoom飲みを通して誰もが気軽にオンライン会議ツールを使えるようになり、仕様も毎日のように進化しています。世界を揺るがしている禍ではあるのですが、ツールを導入して広めるには好機なのでしょう。どんどん使いやすくなってきています。
その一方で、昨年からクラウドのソリューションを提供している企業の事例紹介の仕事を継続して担当していたのですが、その会社の本業が忙しくなりすぎて、広報活動にまで手が回らないからしばらく中断と告げられ、時流に乗った仕事をしていたはずなのに仕事を失うという、少し笑えない経験もしました。
何が起こるかわかりませんね…。
とにかく今は、事態が収束することを願うばかりです。旅にも出たいですね。またこのブログに旅日記が書けるようになりますように。
【INDEX】
Part 01(準備編)パソコンのカメラはどこにある?
Part 02(準備編)パソコンのマイクはどこにある?
Part 03(準備編)オンライン会議のツールを試してみる。
Part 04(準備編)実は大切なカメラの位置と画角。
Part 05(実践編)オンライン会議の進め方。
Part 06(実践編)オンライン取材・インタビューの進め方。
Part 07(実践編)オンライン取材・インタビューの録音方法。
Part 08(実践編)オンライン取材・インタビューのテクニック。
Part 09(まとめ)これからはオンライン取材・会議が主流に?
Part 10(おまけ)オンライン飲み会